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すると何故か、シーンとした数秒の沈黙が続いた。
えっ?何?何でなにも喋らないの?
えっ、あ、私?そうか、私がこの状況をまず説明しなくちゃだよね?
「あっ!えっとね、健太、昨日…」
「悪い健太。昨日新入社員の歓迎会でさ」
だけど話し始めてすぐ、部長が私の声に重なるように健太に話し始めた。
「とりあえずみんな元気過ぎて、二軒目にカラオケ行って結局朝まで歌ってたんだよ。こっちは疲れてるし早く帰りたかったんだけど」
えっ?二軒目…カラオケ?
なっ、何でウソつくの?
「そうだったんですか、それはお疲れ様でした」
「本当お疲れ様だよ、帰りもわざわざ送らされてさ。とりあえず最後の大月を降ろしたから俺もやっと帰れるって感じ」
「ははっ、大変なんですね、上司は上司で」
部長の言葉を聞いた健太はそう言って笑った。
「じゃ、俺はもう帰って寝るわ。朝のウォーキングだっけ?頑張れよ」
部長は私たちにそう言うと再びタクシーに乗り込んだ。
「じゃあな」
走り出していくタクシーを見送りながら、どうして部長はウソをついたのかがわからなくてモヤモヤしていたけど。
「…本当に今までカラオケにいたのか?」
いきなり健太にそんなふうに聞かれたせいか、思わず即答で口を開いてしまった。
「うん!カラオケ!めちゃくちゃ歌ってきた!」
ウソにまた、ウソを重ねるように。
「久しぶりだったな~カラオケなんて」
私は健太に、そう答えてしまっていた。
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