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「本当に?」
「…はい、大丈夫です」
頷きながら、もう一度そう答えた。
「よし、じゃあ真琴ちゃんって呼ばせてもらうよ」
青山さんはそう言うとニコッと目尻を下げて笑った。
……反則でしょ、これ。
こんなに優しそうな顔で微笑まれたら、この前のことなんてチャラにしてしまいたくなる。
「真琴ちゃんはまだトレーニング残ってるんだよね?」
「あっ、はい!」
「そっか、じゃあ頑張ってね。俺はもう今日の分は終わったから。また…ここで会ったら気軽に声かけて。俺も見かけたら声かけるし!」
「はっ、はい!ありがとうございます」
「じゃあ、またね!」
青山さんはそう言うと、もう一度ニコッと笑顔を見せて爽やかに歩いていく。
ダメだ。
もう、完全に塩対応の一件がチャラになりそうな勢いだよ…。
「どうした?そんな赤い顔して。暑いのか?」
「えっ」
ボーッと突っ立っていると、いつの間にか健太が隣にいた。
「べっ、別に…」
「あー!さては大樹さんと喋ったから赤くなってんのか?」
「はぁ!?別に赤くなんてないし!」
「ははっ、じゃあ鏡見てこいよ?顔が真っ赤だぞ」
健太はそう言うと意地悪そうにニヤリと笑ってフロアにある大きな鏡を指差した。
「見ないし!」
「あっそ、じゃあさっさと戻るぞ。トレーニングの続きだ」
「えーっ、もう帰りたいんだけど」
気が重い。体も重い。
モチベーションも上がらない。
「ほらっ、歩け」
なのに強引に健太に背中を押され、私は渋々トレーニングジムへと戻された。
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