あの男が現れました

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だけど、帰宅後はそれどころではなかった。 「えっ…晩ごはん、これだけなの?」 お腹を空かせて食卓に直行すると、そこに並んでいる食事メニューに思わず目を疑った。 「これだけって、サラダはたくさんおかわりあるわよ?たくさん食べなさい」 母はクスッと笑いながら私を見つめる。 …嘘でしょ。 とりあえず椅子に腰掛けたものの、目の前の食事メニューを見るとため息がこぼれた。 てんこ盛りの野菜サラダに、野菜がゴロゴロ入っている赤い色のスープ。 「…お肉も魚もないじゃん」 それだけじゃない。ご飯がない。 つまり米がない。 米のないメニューなんて、ありえない。 「ん?お肉なら入ってるわよ?そのスープの中に」 母のそんな言葉に、スプーンを手にしてスープの中を探る。 …鶏肉? 「ね?ササミが入ってるでしょ」 …ササミですか。
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