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「べっ、別に気にしたりしてるわけじゃないから!」
「はいはい、そうですか~」
「なにがそうですか~なの!?ちょっと聞いただけだし」
「分かってますとも、聞いただけ、ですよね~」
む、むかつく。
何でいちいち敬語なわけ?
「っていうか、ただのインストラクターと客のわりに、何か妙に親しい感じがするのは何で?」
「あ、大樹さんは、俺が高校の時にバイトしてた居酒屋によく飲みに来てたんだけど。バイト辞めてからは会うこともなかったのに、こっちに転勤してきた初日に、ここで久々に再会してさ」
「ふーん、再会…か。そんな偶然あるんだね…」
「あるんですよね~、これが男女なら運命の出会いとか思っちゃうよな~」
何でニヤニヤしてんのよ。
何でそんなにこっちを見るわけ!?
「も、もう終わったし帰る!」
「おう、分かった」
「じゃっ……じゃあ、お疲れ…」
「お疲れさん」
変な空気に耐えられなくて、私は慌てて更衣室へ直行した。
な…によ、ちょっと聞いただけじゃんか。
ちょっと聞いた…だけなのに。
ふと近くの鏡に目を向けた私は鏡に映った自分の顔を見た途端思わず両手で頬を覆っていた。
ちょっと待って。
どうして私、こんなに顔が赤くなっちゃってるの!?
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