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「っ!」
後ろからいきなり肩を掴まれた私は、驚きのあまり声が出なくて。
だけどすぐに振り返ると、スーツを着た小太りの中年男性はニヤリと笑いながら私の胸元へと手を伸ばしてきた。
ウッ、ウソ……でしょう!?
私、痴漢されるの!?
「おい、おっさん!」
だけどその時。
後ろから聞こえてきた聞き覚えのある声に私はすぐに振り返ると、瞳に映った幼なじみの姿に迷わず全速力で駆け寄った。
「大丈夫か真琴?」
「けっ、健太ぁぁ……」
それはまさに、ピンチに現るヒーローのようだった。
半泣き状態で健太の後ろへ隠れた(つもりの)私は、バクバクする心臓の音を感じながら、変態の中年男へと視線を向けた。
健太のおかげで間一髪、ギリギリのところで触れられはしなかったけれど……あとほんの数センチで触られていたかもしれない。
「ふざけんなよテメー!」
そうだそうだ!
健太の声で、私も強気を取り戻していく。
「痴漢すんなら他あたれ!」
…?そうだ!
「わざわざデブに欲情すんな!」
……は?
「わかったか!!」
「はっ、はい!」
「わかったならさっさとうせろ!ぶっ飛ばすぞ」
「すっ、すみませんでした!」
言いながら向かっていこうとする健太の姿に、中年男は後ずさりしながら小走りで逃げていく。
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