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だけどその時だった。
空に突然稲光が走り、ドーン!と響いてきた遠雷に、周囲は慌ただしく走り抜けていく。
泣きながら歩き出した。
雨はよくても雷に打たれてしまうのだけは勘弁だ。
うつむきながら、大雨の中をとぼとぼと進んだ。
ーーーその時だった。
「大丈夫?」
そんな声と共に、強く降っていたはずの雨が止んで。
ふと顔をあげると、そこにはスーツ姿のひとりの男性が立っていた。
な、何この人…
ハッとなって見上げると、私の頭上には藍色の傘があった。
どうやらこの人は?親切に私を傘の中にいれてくれているようだ。
「だっ…大丈夫、です」
距離が近すぎて、思わずまた、うつむいてしまった。
だって、こんなにカッコイイ人は今まで見たことがない。
モデルですか?と、聞けるものなら聞いてしまいそうになる。
おそらく180センチ以上はある背丈に、すらっとした長い手足。
爽やかなダークグレーのスーツは、とてもお洒落に着こなされている。
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