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「大丈夫って、びしょ濡れだけど?」
雨音が響く傘の下で何故かクスッと笑われた。
「えっ、あっ、雨!私、雨が好きなんで」
一体私は何を言ってるんだろう。
とっさに出てきた言葉とはいえ、雨が好きだからびしょ濡れでも大丈夫、だなんて。
「まぁ、俺も雨、キライじゃないけど」
えっ…?
思わず顔をあげると、目と目が合った。
するとその瞬間、不思議な音を鳴らすように胸の中にトクンと何かが響いた。
ニコッと私に微笑んでくれているのは気のせいじゃ、ないよね?
でも何で?こんな私に。
ブスでデブでメガネな私に。
どうしてこんなにも優しい顔で、この人は笑ってくれてるの?
ドキドキしながら私は返す言葉を探してた。
だけどそれよりも先に。
「でも、風邪ひくから。これ使って」
彼はそう言いながら、私の手をとりそっと傘を掴ませてくれた。
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