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これは夢？
どう考えても素敵なシチュエーション過ぎる。
ドラマだったらここから恋が始まってもおかしくないようなそんな展開だ。
だけど夢は、所詮夢でしかない。
「えっ、いえ、だっ、大丈夫なんで！本当に」
私は自分のことを、よーく分かっているつもりだ。
夢を見れるようなそんな女ではないことくらい、ちゃんと身分をわきまえている。
「だからこの傘、結構です！」
目が覚めたように、
慌てて傘をつき返した。
だけど、どうしてだったんだろう。
「まぁ、いらなかったら捨ててくれてもいいから。俺、会社そこのビルだから走ったら3秒だし」
つき返した傘を受け取ってくれないまま、彼は走り出していく。
点滅する信号。
慌てて向こう側に走っていったその姿に、胸がキュッとなった。
3秒なんて…嘘じゃん。
大通りを挟んだ向かい側。
一際大きなビルへと入っていった彼の姿を私は見えなくなるまで見送って。
残された藍色の傘を見上げながら、お洒落な木目の持ち手をギュッと握りしめた。
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