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薄闇で必死に目を凝らしていると、狭い視界を、植物の弦がゆっくり横切った。まるで意思を持っているかの如く、長兵衛の頬の上を這い、巻き付いてくる。
弦には小さな吸盤が幾つも付いており、貼り付いた皮膚にプツプツと吸い付くのを感じた。
「……うぅっ! ぐうーっ!!」
恐怖に突き動かされ、長兵衛はありったけの力を込めて叫び、身をよじった。
そんな彼の抵抗に気付いたように、足の先から頭の端まで、一斉に弦がギュウと締め付けてきた。
「――ううーっ!!」
締め付けると同時に、弦に付いた夥しい吸盤が長兵衛の皮膚を喰い破って刺さり込んだ。そして、流れ出た血液を一滴残さず吸い上げ始めた。
痛みと恐怖が貫く中、長兵衛の視界は豊かに生い茂った真っ赤な蔦の葉に覆われていった。
薄れる意識の彼方で、ワサワサと葉の擦れる音がさざ波のように響いていた。
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