船霊

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 前髪を切られた幼い女の子!    どうしてなのか、分からなかった。  分かったことは・・・  近所の子供たちに、髪型が可笑しいと、からかわれていた事で、悲しい気持になっていた事だけであった。  不揃いの髪の毛を、体裁良く整えてはみても、理髪店の手さばきには、ほど遠かった。  父親のいない女の子には、母親の温かい愛情を受けていることを、知っているからこそ、困らせて悲しませたくないと、子ども心に、思っていた。  地元で名家の神向寺家は、数多くの事業をしている。  国や県が掲げている雇用促進にも、従業員数でも、貢献を成しているのである。   しかし・・・  事業の一つである、遠洋事業部が遠洋船での不漁続きで、経費削減等、試みてみても成果が出ない状態で、主である四代目神向寺巳ノ助は苦渋の決断に迫られていた。  遠洋事業から撤退した方が良いのか・・・  巳ノ助の高齢の母親は、息子にある事を お願いしに行ってきなさいと伝えた。  巳ノ助の先祖も時には、その場所に出向いて行ったことがあると言うのだ。  確かに、商売繁盛、身体祈願等、多くの人達が頼って行く処だとは、聞いてはいたが・・・  巳ノ助の妻に相談して、行く決心を した。
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