船霊

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 久美子の夫は神仏に対して、信仰心が深く何かにつけて参拝していた為、必然的に一緒に来ることが多かった。 亡き夫がこの世を去っても、久美子自身も何かあるときには神社への参拝に訪れては、時間の許す限り境内を掃除しては帰るのが、当たり前になっていた。  あの時、久美子の母親の病気回復の願掛けした、神社へのお礼参りに来た時の事である。  いつもの様に境内を掃除してる久美子の側に来て、なにやら小さい手からはみ出してる白蛇を胸に優しく包んで持ってきた。  久美子は見たことにない、白の蛇が我が子に抱かれていたので、びっくりした。 史恵の大きな目から、   「どうしたの?ふみちゃん!どこからそれを・・・」 「あのね・・・石段をほうきで掃いていたら、苦しそうに助けてって!泣いてるの。可哀想だとお母さん、助けてあげたいの!」 「そうだったの・・・お薬がないから、どうしようかなぁ~」  「病気は治せないけど、蛇は日光にあたるのは良くないと思うの。静かな葉の覆う場所に置いてみようね。」 「食べ物は何かお母さんと一緒に見つけて見ようね」  神社の裏手の小高い藪へ入り、湿気がある木々の辺りを掘ると、ミミズがくよくやしていた。  手提げ袋に何匹か入れて、境内の裏庭の大木の茂みに穴を堀り、湿気のある葉っぱを覆い、ミミズを白蛇の口元に届けようにおいて上げた。  史恵は小さな声で白蛇に語りかけて、頭をさすって上げた。 「蛇さん、元気になってね!バイバイ」    あれから、危機を乗り越えた神向寺家は、更に事業を幅広く手掛け、水産加工食品は国内に留まらず、海外進出までになった。 全国規模での工場は各都道府県の地域活性化にもなっていた。  消費者の需要拡大に繋がり、名実とも日本の経済成長の主要となった。  その時、史恵22才である。
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