船霊

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 関東エリア内の国立大学卒業後、母がいる故里が就職先になった。    かつて幼い時から家族がお世話になっていた会社は、想像もしないほどの建物となり、初出勤する姿に従業員が振り向く程に、美しい女性となって現れて来た。  高校から大学卒業迄の月日は、地元になかなか帰らずに、母の負担をさせないためにも、高校、大学と授業料免除の特待生として、生活費は全てアルバイトで賄ったのだ。  五代目、神向寺家長男、祐輔が社長就任となり、新入社として社長室に呼ばれた史恵。  中学以来、全く会わない月日の中で、懐かしさと、素敵な女性になった史恵を目の前にして、言葉を失う程であった。  清楚ながらも凛とした姿と、奥ゆかしい身の熟しに、言葉が詰まってしまった。  二度惚れ・・                平成30年4月吉日。  神社での結婚式が上げられた。  祐輔の妻となる史恵の人生の門出に幸あれと、多くの祝福の拍手が止むことがなかった。  数十年前に、拝み屋が神を降ろしてまでお告げを伝えた事は、2人には知らされてはいない。  まさに・・・  出会うべき時に、出会うべき人と。  拝み屋のお告げの末代まで護られる・・・  今、生きてる我々には、語り部となる月日までの歴史を重ねなければならない。        
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