3章 心に宿る不信感

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3章 心に宿る不信感

――いよいよ雨が強くなってきた。 つけっぱなしのテレビは、いつの間にか昼の旅番組に切り替わっている。画面の上では、洪水注意を呼びかけるテロップが表示されている。 リビングの本棚に目を移す。びっしりと並べられた本を眺め、昨年流行ったミステリー・恋愛小説を手に取った。 これは、俺が一番苦手な話だ。 浮気された男が、彼女に関わった者全てを殺していく話。男の気持ちに共感してしまう俺がいる。 そんな自分を、どんどん嫌いになっていく。 この感情を早く忘れるべきだと、俺は思った。
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