3章 心に宿る不信感

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「ねぇ、何をそんなに怒っているの?」 「怒ってないよ」 「嘘よ」 「静かにしていてくれないか?」 彼女は明らかにムッとした。小さなケンカだった。 だけど、俺があの時彼女にイラついていたのは確かだ。そして、これが別れの引き金になった。 他に好きな男がいて、もうここに居たくないのなら、早く視界から消えてほしいとさえ思った。 けれど、俺はまだ彼女が好きだった。 そして最後の日、別れの言葉と愛おしい香りを放つあの花の鉢植えを残して、彼女はこの部屋を出た。 別れ際にカーディガンを渡したのは、きっと彼女が返しに来てくれると思ったからだ。 こうして今も、俺は再会を夢見てる。
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