25人が本棚に入れています
本棚に追加
「ねぇ、何をそんなに怒っているの?」
「怒ってないよ」
「嘘よ」
「静かにしていてくれないか?」
彼女は明らかにムッとした。小さなケンカだった。
だけど、俺があの時彼女にイラついていたのは確かだ。そして、これが別れの引き金になった。
他に好きな男がいて、もうここに居たくないのなら、早く視界から消えてほしいとさえ思った。
けれど、俺はまだ彼女が好きだった。
そして最後の日、別れの言葉と愛おしい香りを放つあの花の鉢植えを残して、彼女はこの部屋を出た。
別れ際にカーディガンを渡したのは、きっと彼女が返しに来てくれると思ったからだ。
こうして今も、俺は再会を夢見てる。
最初のコメントを投稿しよう!