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「ごめん、やっぱり無理みたい。もう動けるから、この布団は元に戻すよ。上は君の家なんだよね、上がってもいい?」
「もう大丈夫なの?お花はそんなに栄養価も高くないのに、少しだけで回復しちゃうのね。汚部屋じゃないからどうぞ」
ほんとだ、顔色が戻ってる。布団をクルクル巻いて担いだ彼は時々うめき声を上げながら、ふらつきながらも階段を上がって部屋に敷いた。
大人の男性だとは思えないくらいにひ弱というか、頼りない。今日から居候するのね。
物置と化してる部屋があるからそこを片付けて彼の部屋として使ってもらおうかしら。お金に余裕はないんだけど、彼の生活用品もそろえてあげなきゃ。
なんて考えていると、彼があたしをジィーッと見つめているのに気が付いた。もしかして声をかけてくれていた?
その距離があまりにも近くて、あたしは「わぁっ!」って声を上げて跳び上がった。顔が熱い。絶対、耳まで真っ赤になってるわよ。
「大丈夫?あんな怖い目に遭って、それでも俺を見捨てないでいてくれるのはとても嬉しいよ。感謝しきれないくらい。でも、これでも俺は君と歳があんまり違わない男だよ。初対面だけど、そこまで信頼してくれているのかなと思って」
「あたしよりいくつか上ですよね。でも、正直言ってアソラさんならあたし1人でも撃退できそうです。それに、そういうことを考えるような人じゃない感じがして」
なんて、いくらなんでも失礼かしら?花妖に殺されかけちゃうくらい最弱な彼でも、彼は年上の男性。その気になればあたしなんか襲うことはできると思う。
でもなんでだろ、こういう欲よりお花への欲というか執着が強い気がして。あ、そうみたい。苦笑してる。
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