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花喰みのアソラさんと出会ったその日は半日以上、黄色いゼラニウムの花妖との戦闘の後始末。
花妖が気を使ってくれて外でだったけど、それでも出していた鉢植えがいくつか壊れてしまっていて。
全部片づけ終わってから店を開けても昨日は結局、お客さんは誰も来なかったわ。野良猫なら1匹やってきてアソラさんにじゃれついていたわね。
夜になって店じまいをして。晩御飯の準備に取り掛かると彼が手伝うとやってきたわ。手伝ってくれるって言っても彼は食べないわけなんだし、って言ったら拗ねて姿を消しちゃった。
そんなに強く言っちゃったかな?って心配になって探してみたら、自分の部屋の掃除やら片づけをしていたわ。
晩御飯にもお花を食べるのかなって聞いてみたら、さすがにもういらないって苦笑。代わりに作った晩御飯の煮魚をすすめたら首を横に振られちゃった。
引かない。口をつける前だったからお箸で煮魚を一口分取って、彼の口元に押し付ける。ギョッとして逃げられた。今度は逃げないように手でもつかんでおかなきゃね。
あたしの手料理を食べさせて何が何でも美味しいって言わせるの、何だか意地になっちゃってるのよね。
食器を片付けている間に彼が先にお風呂に入って、それからあたしが入った。お風呂場がほんのりお花の匂いがしたわ。
で、リビングに戻ったらアソラさんの姿がないの。きっと疲れてたのね。部屋でもう寝ていたわ。
子供みたいな寝顔でぐっすり、起こさないように小さく「おやすみなさい」と声をかけてからあたしも就寝。
アソラさんとの出会いや花妖のこともそうだけど、まさか年の近い男の人と一緒に住むことになるなんて。意識したら、急にドキドキ。
彼が言っていた通り、あたしには危機感がないのかも。まだ少しだけ怖いけど、どうしても彼を放っておけないの。
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