16人が本棚に入れています
本棚に追加
/90ページ
うちはお花屋さんなんだし、彼の力のせいでまた花妖が生まれるかもしれない。ううん、確実に生まれやすい環境よね。
お花屋さんと花喰みなんて最悪の組み合わせでしょ?でもね、本当にお花が大好きなんだって伝わってくるの。それが嬉しいから、あたしはアソラさんを受け入れたのよ。
他の花喰みを見たことはないけど、彼は最弱以外でも特別なんだと思う。勝手にお花を食べちゃうのは大問題だけど、なんだか胸の奥が温かくなった。
でもビックリしたわ。まさか彼が、あたしが寝ている間に部屋に入って目覚まし時計のアラームを切っちゃってただなんて。
しかも、ハーブティーを淹れてトーストを焼いて朝食の準備をバッチリ整えてからあたしを起こしに来てくれたのよ?
まるでどこかのお嬢様の執事。「おはよう、ミサキさん。朝食の準備ができたよ」なんて起こされたらそりゃあ、10秒くらいは固まっちゃうわ。
言葉の意味を理解して一気に目が覚めたら彼に手を引かれて、先に洗面所。顔を洗ってから完全覚醒。
あたしのいつもの朝食だわ。テーブルに並べられた見慣れた光景。ハーブティーをすすってビックリ、とんでもなく美味しいんだけど。
使っているハーブはいつもと同じなのに淹れ方が違うだけでこんなにも美味しくなるなんて。あとで教えてもらわなきゃなんて考えながら、向かいに座ってニコニコしている彼に目を向ける。
「ありがとう。でもやっぱり、アソラさんは食べないんですね」
せっかく作ってくれても用意されている朝食はあたしの分だけ。アソラさんの前にはコップ1杯の水と、自分で選んだらしい枯れかけのお花が数本。
「これで十分。匂いで美味しそうとかはわかるけど、花以外………………味がわからないから。どんなに美味しいものでも味が濃いものでも、どれも俺にとっては無味。だから、花しか食べないんだ」
最初のコメントを投稿しよう!