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アソラさんは驚きつつも2人の手を握り、微笑みながら「良かったらまた来てください」と声をかける。
ここ、あたしのお店なんだけど。あたしもカインさんに「羨ましいわ」って声をかけてみた。そしたらカインさん、頬を赤く染めて「ミサキちゃんにもきっと、素敵な旦那様が現れるよ」って微笑むの。
よく見たらディールさんの方の怪我は見た目よりも浅くて、カインさんの方が深いみたい。あたしの家で簡易的に手当てをして、それから2人は手をつないで帰っていった。
「……アソラさんの力、少しでも抑える方法があればいいのに。ほら、アソラさんも手当てをして……あれ、もう塞がってる?」
2人を見送った後、再び2階にあがって今度はアソラさんの手当て。って思ったんだけど、すでに血が止まっているだけじゃなく傷口も綺麗に塞がっているの。
「花妖が俺をエネルギーにするように、俺も花妖を喰ったらエネルギーになる。普通の花を食べるよりも何倍も力がついて、怪我だってすぐに治ってしまう。俺はもう、人間じゃないんだよ」
「人間ですよ。アソラさんはちゃんと人間として生まれて、人間として生きています。お花や花妖を食べるから、特殊な力があるから人間じゃないっていうのは、産んでくれた親への冒とくです」
「親、か。ミサキさんは優しいんだね。でもね、俺に優しくしないでくれるかな?優しくしてもらう資格なんてないから。あ、でも、同居と花を分けてもらうのは別だから!これだけは助けてっ」
変なアソラさん。暗く、悲しそうに言うからちょっと怒ってみたら最後は慌てた様子でバタバタ。
大丈夫。誰がなんと言おうと、アソラさんは1人の人間です。あたしが保証します。だから、もっと胸を張って自信を持ってください。
そう続けようと思ったのに、何よ。笑いがこみあげてきて我慢できなかったわ。
「な、何で笑うんだよ!?俺だって必死で……あーもー、クククッ、俺までつられて……ククッ、あははははっ!」
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