大好きなんです

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「あぁ、全てを壊してしまいたい。体が勝手に動いてしまうのは貴方のせい。私はこの子を守りたいだけなのに」  花妖はそう呟く。え、モンスターみたいなのじゃないの?攻撃するのは自分の意思じゃないってこと?どういうことなの?  店の外で花妖の攻撃を必死に避けているアソラさんには余裕がない。対する花妖はあたしに背を向けて。近づこうとすれば足元にドスッ!と根が突き刺さる。  近づくなって威嚇?あたしを守りたいって言っていたし、腕を掠ったのは勢い余って出てしまった攻撃だったの? 「俺ってそんなに有名?最悪の名は悪い意味で広がってるのか。くぅ、あぁぁっ!!ぐっ!」  それより、退治する仕事のはずなのに。アソラさんがめっちゃくちゃ弱いんですけど。さっきから避けるばかりで、なのに攻撃は食らっていて。  片足を根に絡みつかれ、武器も何も持っていない彼の太ももに別の根が突き刺さる。しかも頭をガードした両腕は花妖の剣山のような腕で殴られ血しぶきが上がる。 「花妖化させる力が強く、けれど体が弱く攻撃の術も持たない最悪最弱の花喰み。この世界で知らない者はいないわ」  うわ、なにそれ。花妖が大きな溜め息を吐いてやれやれと首を横に振っているわ。じゃあどうやって花妖を倒すのよ?  もうやだ、何なのよ。昨日まではいつもとおんなじ日々だったのに。いきなりこんなわけのわからないお花を食べちゃう人が現れて、しかもお花がバケモノになっちゃって。  このままアソラさんが倒されて、次はあたし。花妖はアソラさんさえいなくなれば治まるって言っていたけど。  アソラさんのお花を花妖化させる力は強すぎるから、1度花妖化してしまったらアソラさんの手によって倒さないとダメなんだって。  ボロボロの彼がそう言っているわ。だから、どうやって倒すっていうのよ?  あたしは怖い。怖い以外に何があるっていうのよってくらい怖い。胸の前で握り締める拳を、ただただ震わせることしかできない。本当に?
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