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「お、終わったの?倒したの?」
「うん。もう大丈、夫……うぅ……」
全然大丈夫じゃない!アソラさんが倒れちゃった!?というか、彼のお腹から「ぐぅぅぎゅるるるるぅーー」って少し前にも聞いた音が。
さっき食べたわよね?戦ってボロボロになって、また急激にお腹がすいちゃったの?
アソラさんは「もう大丈夫」って言っていたけど。顔を上げるとそこに花妖の姿はなくて。代わりに、湯気が立ち上る水溜まりの中に黄色いゼラニウムの鉢植えがあった。
鉢は割れて中から土が飛び出て、投げ出された根っこは所々が切れて黒く腐ってしまっている。茎や葉もちぎれて白く変色、鮮やかな黄色だった花も白や黒に変色して腐っている。
これはもう救いようがない…………あれ、ひと枝だけ青々としてる?まだ生きてる!
これなら挿し木でよみがえらせることができるわ。今度は花妖化しないで、普通の黄色いゼラニウムになって育てられると思う。
とりあえずアソラさんを、なんとか引きずって店の中に入れて。戻って花妖の残骸を片付けて生きている部分を切って受け皿の上に置いて乾燥させる。
十分乾燥できたら小さい鉢に植えて、2か月もすれば根が張って育ってくれるはずよ。
だってこの黄色いゼラニウムはあたしを守ろうとしてくれていただけなんだもの。アソラさんの花妖化させる力が強くても、あたしの強い“怖い”って想いがなければ花妖化はしなかった。
アソラさんも悪いけど、あたしも悪い。だから「ごめんね」って、大事に育てるの。
「ん、うぅ……っ」
次はアソラさん。2階に上がればベッドがあるからゆっくり休んでもらえるんだけど、さすがにそこまでは引っ張って上がれない。
仕方ないから、店の片隅に2階から降ろしてきた布団を敷いて彼を寝かせる。ふぅ、大変。
最初に見た時みたいに顔色が悪くなってる。お腹が鳴ってたし、また花を食べれば復活するのかしら?って言っても商品しかないんだけど。うーん。
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