最後の恋

噂話と痛い視線

「えっ、じゃあ木曜の29日から実家ってこと？」

「うん」

「そっか。４日まで休みやけどずっと実家に帰ってるん？」

「３日の夜には帰ってくると思うよ」

その夜、いつものように椎名と電話で話していた時に年末年始の予定を先に伝えておいた。

「そっか。じゃあ休み最後の日は空けといて。デートしよ！」

「うん、分かった」

「俺も年末年始は大阪帰るから、いっぱいお土産買ってくるわ」

「ありがと」

普段通りの椎名の声にホッとする。

だけど、今日一日椎名の方はどうだったんだろうとふと思った。

「ねぇ？」

「ん？どうしたん？」

「今日、何か言われたりしなかった？その…私とのこととか」

「あぁ！言われましたよ、良かったな、頑張れよ！って」

何その反応。

営業部はほとんどが男ばかりとはいえ、男の反応ってそんな感じなの？

私と正反対じゃない。

「でもさ、噂…」

「えっ？」

早川さんのことや社内で流れている噂のことを話そうと思った。

「いやっ…何でもない」

「えっ？」

「ううん、っていうか今日寒いよね」

だけど何故か話せなかった。

椎名の方は大丈夫そうだし、そんなことを話してもまた心配させるだけだと思ったから。

人の噂も75日っていうし。

とりあえず噂話が落ち着くまではあの嫌な空気にも耐えるしかない。

数日我慢すれば、周囲の様子も少しは落ち着いてくれるはずだ。