溢れた涙

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「久しぶりだね!」 「一年ぶりだもんね」 その夜、私は地元の駅前にある居酒屋にいた。 ワイワイ賑わう個室。 地元の同級生の男女が20人ほど集まっていた。 「こら、ちゃんと座って食べなさい」 「いいなぁ、歩いてるの。うちまだハイハイだからさぁ」 「ハイハイしてるうちがいいって。歩き出すと目が離せなくなるよ?」 目の前に座るカヨちゃんと美咲の視線の先にいる子供達。 1、2、3… 目で追って確認しただけでも10人はいる。 子供を預けて来ている子もいるから、実際はもっといるんだろう。 ぼんやりと賑わうみんなを眺めている時だった。 「莉奈は変わらないよね」 「うんうん、いつ会っても綺麗にしてるし」 カヨちゃんと美咲が私を見ながらそう言ってきた。 「そう?」 「ほんと、莉奈はカッコイイよ。女子力高いもん」 隣に座っていたアキエが、そう言って私の顔をのぞきこむ。 「シワとかシミとか全然ないじゃん。あ、しかもこれ、あのブランドの新作じゃない?」 「えっ、あぁ、これ?」 「うん」 首元に付けていたネックレスに、三人の視線が集まる。 「ははっ、見過ぎだってばみんな」 たまらずそう言って私は笑った。 「いいなぁ、私も莉奈みたいにバリバリ働いてカッコイイ女になりたかったよ」 「だよねー、なんか老ける一方だよね、最近自分の買い物なんて全然してないや」 「分かるー!結局買い物行っても子供のものとか家のもの買っちゃうもんね」 きっと、愚痴を言っているんだと思う。 だけど私には愚痴には聞こえなかった。 三人は結婚して子供がいる。 小さい子供がいて、子育てに追われている。 でも、みんな結局幸せでしょ?
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