溢れた涙

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「あー、はよ年明けて3日にならへんかな」 「えっ?」 「3日には莉奈さん帰るんやろ?俺も3日の昼には帰るつもりやし」 「うん」 「4日の最後の休み初詣行かへん?」 「うん、行こっか」 「よっし!決まりな!」 電話の声だけで伝わってくる。 笑っている椎名の顔が。 最初はどうなるのかと思ってた。 いきなり付き合うことになったけど、付き合ったらどうなるんだろうって思ってた。 年の差は確かに感じる。 だけど椎名は、それを気持ちで埋めてくれる。 だから惹かれていく。 どんどん好きになっている。 そして今はブレーキが効かないくらい、好きになり過ぎているような気がする。 「じゃあ、お土産も持っていきたいし、3日の夜に莉奈さんとこ行っててもいい?」 「いいよ、私も夕方には帰ってると思うし」 「うん!じゃあ、また明日も電話するから!」 「うん、じゃあまたね。おやすみ」 そう言って電話を切った私は、立ち止まったままふと夜空を見上げた。 神様って、ほんとにいるのかな? だとしたら、意地悪だよね。 こんなに惹かれて好きになっていく相手が6歳も下で。 30歳へのカウントダウンが始まってから、そんな新たな出会いを与えるなんて。 そして、結婚という選択を手を伸ばせばすぐに届くようなそんな目の前に与えるなんて。 本当に、意地悪だと思った。
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