溢れた涙

12/12
前へ
/353ページ
次へ
「おかえり」 遅い帰宅になったというのに、今日も母は寝ずに起きて待っていてくれた。 時計を見ると、昨日と同じような時間だった。 「寝てくれててよかったのに」 私がそう言うと、母は黙って水の入ったコップを渡してくれた。 「莉奈、何かあった?」 「えっ?」 思わず目を逸らしてしまった。 もしかして、泣いてたこと…気付かれた? 「何もないよ」 「そう…。まぁ、莉奈ももういい歳だし、いろいろあると思うけど。でも、あんまり無理しないでね」 「うん…分かってる」 私がそう答えると、母はすぐにリビングから出て行った。 心配なんてかけたくない。 そう思っているのに、多分それができていない。 きっと、私の顔を見て母はすぐにわかったんだと思う。 そりゃそうだよね。 自分が育ててきた娘だもん。 簡単に分かっちゃうよね、泣き顔の痕くらい。 その夜はなかなか眠れなかった。 いろんなことを考えた。 椎名のこと、サトルのこと、父や母のこと。 結婚、出産。将来。 幸せになるためには、何が一番大事なんだろう。 どうすることが、自分にとって一番最善な選択なんだろう。 見えない未来に不安ばかりが募っていく。 私はどんな人生を送るのだろう。 ちゃんと親を安心させられるような時は来るのかな? 見つからない答えに、ただただ焦るばかりだった。
/353ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1519人が本棚に入れています
本棚に追加