家族になるということ

6/10
前へ
/353ページ
次へ
「莉奈?」 しばらく部屋にこもっているとコンコンッとドアがノックされた。 「んー?」 開いたドアから、母の顔だけがひょっこりのぞく。 「もうすぐ年越すわよ!?カウントダウンしないの?」 「はいはい、行く行く」 カウントダウンしたからといってどうなるわけでもないけれど、なんとなく毎年テレビを見ながらカウントダウンしているうちの家族。 「あ、もう寝ちゃったんだ?ちびっ子達」 リビングにはもう子供達の姿はなく、お酒を飲みながら大人だけがテレビを見ていた。 「お前も飲むか?」 「あぁ、うん」 兄に聞かれてそう答えると、母はすぐにグラスを出してきてくれた。 酔っているのか、雑に注がれるビール。 「泡ばっかじゃん、ヘタクソ」 「ついでもらっておいてヘタクソはないだろ」 「だってみてこの割合。7:3だよ?いや、8:2で泡の方が多いかも」 「つべこべ言わず飲めっつーの」 「はいはーい」 「はいは一回だ」 「はーーーい」 「のばすなよ」 「はい!」 「声でけーから」 「もう、うるさいなぁ。ねぇ詩織ちゃん、お兄ちゃんなんかのどこが良くて結婚したの?」 「はぁ?そんなこと今聞く必要ねーだろ。ほら、カウントダウン始まるぞ」 くだらない会話を繰り返しているうちに、今年もあと30秒をきった。
/353ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1519人が本棚に入れています
本棚に追加