初詣の願い事

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「莉奈、気をつけて帰るのよ」 「うん、ありがとう」 お正月の三が日までを実家で過ごした私は、地元の駅まで父と母に送ってもらっていた。 「盆正月だけじゃなくて、ちゃんとたまには帰ってくるんだぞ?なんてな」 父はそう言って笑っていたけれど、やっぱり寂しそうに見える。 「分かってる、またすぐ帰ってくるようにするから」 だけど私がそう言うと、本当か?とすぐに嬉しそうに笑った。 「うん、じゃあまたね」 寂しい気持ちを抑えながら改札を抜けると、しばらく歩いたところで私はふと後ろを振り返った。 「気をつけて帰るんだぞ!」 「帰ったらLINEでいいから着いたっていう連絡してね」 父と母は、歩き出していた私をずっと見送ってくれていた。 「はーい!」 明るく返事をして、私はまた前を向いて歩きだす。 いつもこういう時、寂しいと思う。 別に永遠の別れでもないのに、胸がキュッとなる。 本当、またすぐに帰ってあげなきゃな。 何故か改めて、そんなことを思った。
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