初めての喧嘩

6/19
前へ
/353ページ
次へ
そして、その夜。 「あの、早川さんと…うまくいってないんですか?」 椎名との電話の最中、突然そんなことを聞かれた私は動揺していた。 「別に、そんなことないよ」 「そう…ですよね」 「何で?なんか聞いた?」 「いや、聞いたというか…早川さんへの当たりがキツイって噂になってるっていう話を大原さんから聞いて…」 当たりがキツイ?私が早川さんに対して? 「俺は、莉奈さんはそんなことせえへんってわかってるんやけど。何か営業部で周りがそんな話ばっかりしてるから…」 「そう…。でも私、別にきつく当たってるつもりなんてないよ」 「分かってます。ごめんなさい、変なこと言って」 「分かってるならさ…」 「えっ?」 「分かってるならそういうこと聞かないでくれないかな」 私だっていろいろ思うことはあるけど、早川さんに対してのグチだって口にせず我慢してる。 「ごめん…」 「女って色々めんどくさいんだよ…男の椎名には分からないと思うけど」 「はい…」 その日はすぐに電話を切った。 椎名に対して苛立ってしまったからだ。 今は一番の理解者でいてほしいのに、一瞬でも周りの声に流されたような気がしたことが、信じられなかった。
/353ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1518人が本棚に入れています
本棚に追加