初めての喧嘩

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「やっとスッキリした」 清々しい顔で椎名は言う。 だけど、私は内心複雑だった。 サトルがどんな気持ちで指輪を買ったのか。どんな気持ちで私にプロポーズしてきたのか。 なくなった途端、そんなことを考えてしまっていた。 「あ、そういえば。桐谷が言ってたんやけど…莉奈さん早川さんとやっぱりうまくいってないんですよね?」 「えっ?」 「あ、桐谷が佐倉さんと付き合い始めたらしくて。佐倉さんが桐谷にそんな話をしてきたみたいで」 「そうなんだ…」 同じ部署の佐倉さんから桐谷君に伝わってる話だ。きっとリアルに伝わってるに決まってる。 「俺のせいですよね…」 「うーん…どうだろう。まぁ、そのうちおさまると思うよ」 「俺、早川さんに言いましょうか?もう莉奈さんに変な態度とるのやめてほしいって」 心配そうな顔で、椎名は私にそう言った。 「いや、いいよ言わなくて」 「何でなん?早川さんのせいで仕事やりにくいんじゃないん?」 「確かにやりにくいよ?でも言ったところでどうなるの?おとなしくなると思う?火に油を注ぐだけだって分からない?」 考え方が幼稚過ぎて、何だかイライラした。 そんなに単純なものじゃない。 大人だからこそ、厄介なんだよ。
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