初めての喧嘩

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日付けが変わった頃、携帯が鳴った。 椎名からの着信だった。 「もしもし?」 「あ、俺。もう家着いたから」 「うん」 「なんかごめんな、今日は」 「ううん、私の方こそごめんね」 「炒飯めっちゃうまかった!また作ってな」 「うん、分かった」 「じゃあ…風呂入ったら寝ます、おやすみ」 「うん、おやすみ」 いつもとは少し違う、ぎこちない会話。 だけど、いつものようにおやすみ、と電話を切ろうとした。 「あ!あのさ」 「ん?」 どうしてだろう。 引き止めてしまった。 そして、言ってしまった。 「指輪…ゴミ捨て場に捨てたんだよね?」 「えっ?あぁ、うん」 「紙袋のまま捨てたんだよね?」 「なんで?」 「いや…そうなのかなって思って」 「もしかして探しに行ったん?」 「いやっ、探したっていうか…」 「なんなん?探しに行ったんやろ?」 「……うん」 言わなくてもいいのに、バカみたいに正直に答えてしまう。 「莉奈さん、必要ないって言ったやんな?」 「…言ったね」 「言ったね、って何?他人事みたいに話すのやめてくれへん?必要ないんやろ?だったら探しに行く必要ないやん!」 「………」 椎名の荒ぶる声に、思わず口が塞がる。
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