鳴らない電話

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だけど、椎名からの連絡はないまま時間だけが過ぎていった。 このまま終わっちゃうのかもしれない。 自然消滅なんて寂しすぎるけど、それが現実味を帯びてきている。 一人でいることには慣れていたはずなのに…一人でいる今が何故かたまらなく寂しいのはどうしてなんだろう。 短い期間の中で、私達は一緒に居過ぎたのかもしれない。 鳴らない電話。 鳴らないインターホン。 笑い声、あのくしゃくしゃな笑顔。 気づかないうちに日常に染み付いていた椎名という存在。 一人きりでソファに座っていることさえ、やけに広々していてしっくりこない。 離れて分かるって本当だ。 近くにあると見えなくなる。 だけど離れると、ちゃんとこんなふうに見えてくる。 あ、私…椎名といて幸せだったんだなって。
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