鳴らない電話

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「ごめんな…」 掠れた声でサトルは私に謝った。 「ねぇ?」 「ん?」 「サトルは、どうして私と結婚しようと思ったの?一番の理由はなに?」 ふと聞いてみたくなった。 プロポーズの決め手があったとしたら、それが何だったのかを。 二年も離れていた私に、どうしてプロポーズしようと思ったのかを。 「莉奈と付き合ってた時間が一番楽しかったから、かな」 楽しかった? 「付き合いが長くなるにつれて、あの頃はマンネリ化してたけど…離れてから思い出す度、お前といる時が一番楽しかったしラクだったな…とか。莉奈といる時はすっげー笑ってたなって思ったりして」 「うん…」 「だからそんな莉奈を傷つけたこと、本当に申し訳なかったと思って。親父も母さんもさ、莉奈と別れたことずっと残念がってたんだ。今でも莉奈ちゃん元気なのかなって話してくるぐらい」 「えっ…そうなんだ…」 同じだった。 サトルの両親も、私の家族がサトルを気に入っていたように、同じように私のことをそんな風に思い出してくれていた。
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