鳴らない電話

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「お母さん達は、元気?」 「あぁ、親父は元気なんだけど…母さんがちょっと今病気でさ」 お母さんが…病気? 「大腸ガンになっちゃってさ。あ、でも初期だから手術すれば全然大丈夫らしいんだけど。なんかすっかり弱気になっててさ…」 「そうなんだ…」 「ってごめん、何か暗い話になって」 「ううん、大丈夫。手術、うまくいって早く元気になってくれるといいね」 「あぁ、そうだな」 明るく話すようにしていたけど、突然の話に正直すごくショックだった。 ガン。 そりゃあサトルのお母さんだって弱気になっちゃうよ。 もし…もし、私のお母さんだったら。 もし、私のお父さんだったら。 そう考えると、ものすごく怖くなった。 人間、誰だって病気になることはあるし、いつかは死を迎える。 でも、お母さんやお父さんがいなくなったらどうしよう。 まだ考えなくてもいいことなのに、そんなことが頭によぎっていく。 「親孝行しなきゃいけない年齢になったな、俺達も」 「うん」 「元気なうちに、できることいっぱいしてあげなきゃなって母さんが病気になって改めて思ったよ」 元気なうちに、親孝行をしたい。 サトルの言葉が、スーッと心に染みてくる。 親孝行したい。 安心させてあげたい。 いつまでも心配かけてちゃダメだよね…
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