鳴らない電話

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「お前も早く幸せになれよ」 「えっ…」 「お父さん達に孫の顔、見せてあげろよ。孫が生まれたらじいちゃんばあちゃんは生きる気力がみなぎるらしいからな」 サトルはそう言ってははっと笑う。 「うん…」 「じゃあ…また。あ、またってのも変だよな。…元気でな、莉奈」 「…うん」 「指輪は言った通り捨てといてくれな。返品はお断りだぞ」 「……うん」 「じゃあ…幸せにな」 サトルがそう言うと、電話はそこで切れてしまった。 幸せにな…か。 断る言葉を聞くこともせず、サトルは自ら身を引いてくれたように感じた。
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