鳴らない電話

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…なんて。 熱のせいで、バカみたいな想像をしてしまう。 だけど。 「何かこうしてるとあの頃に戻ったみたいな気になるな」 「えっ?」 「あ、いや…あれだ、独り言だ」 そんなサトルの言葉に、思わず笑ってしまった。 サトルも同じことを思ったんだ。 離れた年月は大きいけれど、サトルは私と同じ思い出を持つ人。 同じ時間を、一緒に過ごした人。 大切だと思う。 今でも大切。 好きとか、そういうものとは違う、それ以上のものがサトルに対してあるような気がした。 「そういえばサトル、仕事は大丈夫だったの?」 「あぁ、そんなこと気にするな。あ、俺、春から営業課の係長に昇進するんだぜ?」 「えっ、本当??すごいじゃん!」 「がむしゃらに頑張ったんだよ、とにかくこの一年」 「えっ?」 「お前にプロポーズする前に何か一つでも形としてやり遂げたくて。去年の営業成績、8ヶ月連続でトップ取ったんだ」 「すごいじゃん!8ヶ月も…」 ってことは…サトル、いきなりプロポーズを決めたわけじゃなかったってこと? 一年間、それに向けて頑張ってたってことだよね? 「結婚するなら、幸せにしたいって思ってさ。とにかく営業成績残して、役職の肩書きでもつけばなぁって。せこい考えだけどな…」 サトルはそう言うと、バツが悪そうに笑う。 知らなかった、たくさんの想い。 分からなかった、サトルの頑張り。 それが分かった今、いろんな気持ちが心の中を埋め尽くしていく。
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