最後の恋

全てはゲーム

午後までみっちり仕事をして、休憩に入る12時ピッタリに私はすぐに立ち上がった。

そして、営業部まで足早に向かう。

廊下から中を覗くと、まだ営業部の人達は忙しそうに仕事をしていた。

その中に見つけた、椎名の姿。

真剣な顔で資料を見ながらパソコンのマウスを動かしている。

よく考えてみたら、仕事中の姿をジッと見るのはこの時が初めてだった。

いつも笑っている椎名とは違う真面目な顔に、新鮮な気持ちになる。

「あ、松永さん」

その時、すぐ近くから聞こえた声に視線が動く。
桐谷君が私に気付いてこちらを見ていた。

「椎名ですよね？ちょっと待って下さいね」

桐谷君はそう言うと、仕事をしている椎名の元へ近付いていき、そっと耳打ちをしている。

顔を上げた椎名は、ゆっくりとこっちを見た。

目と目が合った瞬間、心臓がドキドキ鳴りだす。

だけどその時、営業部のフロアが突然騒がしくなった。

「まさか本当に椎名が松永を落とすとはな～」

「早すぎてビックリだったよな」

「本当、負けるなんて思わなかったのに。かなり損したよ」

そんな声が私の耳に入ってきた。

すると、何故か椎名は慌てたように立ち上がる。