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もう終わったことだ。
わざわざ思い出す必要なんてない。
思い出すような思い出じゃない。
全部ウソだったんだから…。
「莉奈!」
「あっ!サキ」
式場に着くと、すぐに入口でサキとバッタリ遭遇した。
「ついに来たね、この日が」
「だね、莉奈緊張しない?私何だかすっごく緊張してるんだけど」
「ははっ、サキっぽい。私は緊張っていうよりもちょっと寂しいかな。エリの花嫁姿見たら泣いちゃうかも」
私がそう言うと、サキはウンウンと頷きながら私の背中をぽんっと優しく押した。
「あ!そういえばさ、莉奈、あれからどうなったの?」
式場の中を進みながら、交わす会話。
「えっ、あぁ、あれね…」
言葉を濁すと、サキは何かを察したように言った。
「あっ、ま、今日はいいや。またゆっくり聞かせて?」
「うん」
空気で感じとってくれる関係。
ものすごくラクだと改めて思う。
「新婦側の受付を頼まれている松永と田中なんですけど」
その時ちょうどすれ違った式場のスタッフに声をかけると、その人は丁寧に受付への案内をしてくれた。
そして受付開始までまだ20分ほどの時間があると説明された私達は、エリの親族の控え室に挨拶に向かった。
「莉奈ちゃん!あ、サキちゃんも!」
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