結婚式のリアル

10/30
前へ
/353ページ
次へ
「本当綺麗だね、エリ」 「うん、めちゃくちゃ綺麗」 式が終わると、チャペルの外のガーデンで参列者との写真撮影が始まった。 私とサキはその姿を見つめながら一番最後まで待った。 そして。 「おめでとうエリ」 「ありがとうサキ」 「エリ…本当に綺麗。おめでとう」 「ありがとう…莉奈」 やっとそんな言葉を交わし、新郎とエリと四人で、私達三人で、それからエリと二人で、たくさん写真を撮らせてもらった。 「あ、そうだ」 そして、写真を撮り終えた時だった。 「あのさ…ごめん、二人にお願いがあるんだ」 エリがそう口を開き、私達は、ん?と、首を傾げた。 「披露宴の友人代表のスピーチ、二人にお願いできないかな?」 「えっ!?」 「えっ!?」 思わず重なった声。 「えっ、私莉奈に頼んでるのかと」 「えっ、私はサキに頼んでるのかと思ってたんだけど」 驚いて、サキと顔を見合わせた。 「私もどっちに頼もうかってずっと悩んでたんだけど…」 エリはそう言うと、申し訳なさそうに言葉を続ける。 「でも、選べなかったんだ。どっちかじゃ嫌だったの。だから…ごめん!何でもいいの、一言だけでもいい…二人にお願いしたいんだ」 エリにそう言われ、思わずクスッと笑ってしまった。 「もう、本当急すぎるじゃん。あーどうしよ…うまく話せるかな」 私が言うとサキも笑う。 「普通は書いて読むのも練習して、って感じでしょ?ぶっつけ本番じゃん、噛むよ?私」 「うん、いい。噛んでもいい」 エリはそう言うと、嬉しそうに笑った。 「エリ!」 「ごめん、行かなきゃ。また後でね」 「うん」 新郎に呼ばれたエリは慌ただしくその場をあとにし、残された私達はまた目を合わせて笑い合った。 「どうしよう、スピーチ」 「だね…まぁとりあえず飲んで勢いつけようか。いつもの私達でいんじゃない?」 「ははっ、そうだね」 サキにそう言われると、堅苦しいスピーチは私達には必要のないものなのかもしれないと思えた。
/353ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1519人が本棚に入れています
本棚に追加