切ない痛み

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やっと仕事が終わったのは、もう21時を過ぎた頃だった。 電源を切り、パタンとパソコンを閉じると、後ろでも同じ音が小さく聞こえた。 ちょうど早川さんも、仕事が終わったようだ。 帰る支度をしながらデスクの上を片付けていると、静まり返っていた空気の中、早川さんが口を開いた。 「松永さん…結婚するんですか」 背中合わせのまま、そう聞かれた。 「えっ、あぁ……そう、なると思う」 まだ会社の人間には誰にも話していない。 「そうですか。指輪……薬指に指輪が光ってたんで。椎名くんもそんなこと言ってたし、もしかしたらって思ったんですけど…そうなんだ……本当に結婚するんですね」 「…うん」 また、シーンと静かになったオフィス。 私は先に立ち上がった。 「じゃ、お先に失礼するね。お疲れ様」 そして、お疲れ様ですという早川さんの声を聞くとすぐに会社をあとにした。
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