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「まさか付き合えるなんてあいつも俺も思ってなかったから…デートする時もどこ行けばいい?とか、どういう服着てけばいいとか。いちいち何かあるたびに俺に電話してきたりして」
桐谷君はそう言いながら何かを思い出すようにクスッと笑った。
「初デートの遊園地も、冬のデート特集ってのが載ってた雑誌で俺と一緒に調べたんです。コートとか服もデート用に買ったんすよ」
頭の中がいっぱいになっていく。
「ちょっと待って」
「へっ?」
「あのっ…賭け…一緒にしてたんじゃないの?」
「賭け?あっ……」
桐谷くんはそう言うと、気まずそうに苦笑いを浮かべる。
「…営業部のみんなでお金賭けてゲームしてたんだよね?五万円……」
「いや、それは…」
「いや、それはって何?……あいつが私に近付いたのは…別に本気じゃなくて…私を落とせるかのゲームだったんでしょう??」
思わず声が荒ぶってしまう。
思い出しただけで腹が立ってきたからだ。
だけど…
「それは……勝手に先輩たちが言い出した話で」
桐谷くんはそう言いながらため息をつくと、真っ直ぐに私を見つめた。
「あいつはマジで研修会の時から松永さんに一目惚れしてたんです。でもあの、大原さんに食事に誘われた時に…先輩たちにどうしたら松永さんと距離を縮められますかってあいつが相談してて…」
「えっ…」
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