お幸せに

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同じ歩幅で、静かに進む道。 シーンとするこの感じは嫌なのに、なんだか胸がいっぱいで言葉が出てこない。 「松永さん、結婚決まったみたいですね」 そんな空気の中で先に口を開いたのは椎名だった。 「早川さんが、昨日言ってました」 「…そう」 「指輪がめっちゃキラキラしてたって言ってたけどほんまそうですね」 「えっ?」 「似合ってる…莉奈さんに」 そう言われた瞬間、すれ違う人の声も、周りの雑踏も、まるで何も聞こえなくなった。 莉奈さんって、椎名が莉奈さんって… 私の名前を呼んだ瞬間、頭が真っ白になった。
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