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「着いたよ、サトル」
マンションの駐車場に着くと、やっと私はサトルを起こした。
「え、…あ!ごめん、俺寝て…」
「グッスリね」
私が笑うと、サトルは両手を合わせて本当にごめんと謝った。
「あ、私、このまま帰るから」
「え?泊まっていかないのか?」
「うん、明日…仕事だしね」
「朝家まで車で送ってくけど」
「うん…でもバタバタしちゃうし」
一瞬、車内にシーンとした空気が流れた。
「そ…そうだよな、分かった」
「うん、ごめんね」
「いや、いいよいつでも来れるんだし」
寂しそうに笑うサトルの横顔に、なんだかものすごく申し訳なくなった。
「歩いて送るよ、駅まで」
「いいよ、五分くらいだし一人で大丈夫」
「いや、送るって」
車を降りた私達は、少し距離が空いたままそんな言葉を交わして。
「うん…」
私がそう答えると、駅までの一本道を二人で歩き出した。
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