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サトルは、私の気持ちに気付いている。
もう分かってる。
だから今日、私に会いに来たんだと感じる。
「つーか、あれだぞ?俺もさ、母さんがガンになったろ?だから何か焦ってたんだよな」
サトルはそう言って、運転しながら前だけを向いて言葉を続ける。
「別にお前じゃなくても良かったの。とりあえず結婚してさ、気が弱ってる母さんを安心させられたら良かったんだよ。まぁ紹介とか考えたら、手っ取り早いし莉奈の顔が浮かんだだけで」
サトルの横顔は、とても寂しそうだった。
「だから別にお前じゃなくてもいいんだよね。よく考えたら結婚するならやっぱり若い女の方がいい気がしてきてさ」
とても寂しそうに、そんな言葉を並べていく。
「だから、やっぱりやめよう…結婚は」
サトルは、私のためにウソをついてくれている。
私が自分から切り出さなくてもいいように、私から、言わせなくてもいいように…サトルは自分のせいにして全てを終わらせようとしてくれている。
「サトル…ごめんね…私…」
「は?何でお前が謝るわけ?俺からプロポーズしておいて、やっぱりやめようって断られてんだぞ?莉奈が謝る必要ないだろ」
「…っ…ごめん…ごめんね…」
「だから謝んなって」
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