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苦しくてたまらなかった。
この人をもう一度好きになれたら、私は必ず幸せになれるはずだ。
だけど…それが出来なくて。
もう一度、あの頃のように戻ることが、私には出来なかった。
「ほら、着いたぞ」
窓の外を見ると、もう私のマンションの前だった。
「…っ…」
動けずにいる私に、サトルは前を向いたまま冷静に言った。
「指輪……今持ってるなら置いていけ。俺がちゃんと、自分で捨てるから」
私は泣きながら、カバンに入れていた指輪ケースを取り出した。
サトルは、そんな私を全く見もせずにただ前だけを向いている。
「サトルと会えて…本当に良かった。サトルと出会えたから…今の私があるの。ありがとう……本当に…っ、ありが…」
「分かったって。ほら、早く行けよ」
涙が止まらなかった。
出会いを振り返り、過ごした時間を思い出しながら、私は車のドアを開くと空いてしまった助手席にそっと指輪を置いた。
「じゃあな」
「…っ…」
「泣くなって。お前は笑ってる顔が一番いい」
「…んっ……うんっ…」
泣きながら、私は精一杯笑った。
泣きながら、サトルが一番いいと言ってくれた笑顔を見せた。
「じゃあな」
「…うん」
車が、ゆっくりと走り出していく。
私はそれを、見えなくなるまで泣きながら見送った。
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