1517人が本棚に入れています
本棚に追加
「えっと……あの、話したいことがあって」
「はい」
「ちょっと…少しでいいから、話せないかな?」
「急ぎですか?」
目を合わせてくれないまま、椎名は冷たい口調でパソコンと向き合っている。
胸がギュッと締め付けられた。
もう…遅いのかな?
私、気付くのが遅過ぎた?
視界がぼんやりと滲んでくる。
「伝えたいことがあるから…っ……会いに来たの」
周りの視線なんて、もうどうでも良かった。
もうすぐ30歳だろうが年上だろうが。
周りに何を言われようが……私は椎名が好きだ。
泣きながら、震える手をギュッと握りしめた。
「…椎名っ……私…っ…気付いたの…。やっぱり椎名じゃなきゃ…」
私がそう言うと、椎名はパタンとノートパソコンを閉じた。
「ほんま勝手な人やわ」
そしてそう言いながら立ち上がると、こっちに向かって歩いてくる。
「ほんま、何考えてるんか全然分からんし…」
そして、つぶやくような声でそう言ったかと思ったら、いきなり私の手をギュッと掴んで。
「もう知らんで?……どうなっても」
そのまま引っ張られるように、椎名は私の手を掴んで歩きだした。
最初のコメントを投稿しよう!