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怒ってるの?
どうなっても、ってどういうこと?
戸惑いながら、隣で歩き続ける椎名を見上げた。
すると、突然立ち止まった椎名はひと気のない給湯室へと私を引っ張って。
「やっと近付けたと思ったらすぐに離れていくし」
次の瞬間、掴まれていた手を離すとそう言いながらこちらを振り返り、後ろの壁にドンっと手をついた。
「離れたと思ったら…いきなりこうやって現れるし……」
「ごめん…」
「振り回されてる感、ハンパない」
「…ごめん、なさい」
至近距離で私を見下ろす椎名は、謝ることしか出来ずにいる私をそっと抱きしめてきた。
「俺がどんな思いで莉奈さんのこと諦めようとしてたかわかってるん?」
えっ?
「ほんまめちゃくちゃな人やわ」
耳元で聞こえる椎名の声。
「どうしてくれんの?」
ギュッと、強く強く抱きしめられた。
「泣き顔なんか見せられたら…もう好きな気持ち、止めれんくなるやん」
抱きしめてくれる腕も、広い胸も。
いつの間にか、こんなにも好きになっていた。
この声も、この匂いも温もりも。
いつからか、一番大切なものになっていた。
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