最後の恋

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「っていうか、ほんとに寒いんだけど」 「だから言ったでしょ?俺の家めっちゃ寒いって」 その夜、手を繋いで初めて訪れた椎名の部屋は、聞いていた通りとても寒かった。 小さなコタツとヒーターを付けていても 結構、いやかなり寒い。 だけど… 「でもこうしてたらちょっとマシやろ?」 「うん…あったかい」 後ろから椎名にスッポリと包まれていると、温かい椎名の体温で体が暖められていく。 「なぁ、莉奈さん」 「ん?」 「俺……決めた」 「えっ?何を?」 私がそう聞くと、椎名は私の耳元で囁くように言う。 「今年の12月3日、プロポーズの予約しとくわ」 そして私をぎゅっと優しく抱きしめてくれた。 「ふふっ、予約?」 「うん。30歳の誕生日に、プロポーズするから」 「えっ…」 「ちゃんと段階踏んで、莉奈さんの不安とか全部取り除いていく。だから…俺を信じて待っててくれへん?」 椎名の言葉は魔法のようだった。 私はその魔法に、これからもずっとかけられていきたいと思う。 「…うん」 未来のことは誰にも分からないけど。 魔法がとける…その時まで。 この最後の恋を大切にしていく。 あなたとなら怖くない。 どんな未来も、あなたがそばにいてくれたら… きっと私は笑っていられるような気がするから。 だから、ずっとずっとそばにいて。 今年の30歳の誕生日を、楽しみに待っています。
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