第一章 あの日のきみともう一度

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 いつもは余裕綽々の彼にしては違和感でしかないその姿に、いい加減ため息が出た。  私は、数時間前、三年間の月日を共にしたこの人に別れを告げられたばかりだった。  赤石基(あかいしもとき)。  何気に中学校に入ってから恋が実るまで、ずっと片思いをしていた相手でもある。 ここ数か月、お互い受験勉強がなんだって会うことも少なくなり、会えばケンカばかりで、そろそろ潮時なんじゃないかと思い始めた頃、思ったより早く、その日がやってきた。  好きな人がいる。  あっさりした言葉だった。  一瞬、周りの世界が灰色に見えた。  呼び出しておいてなかなか来ない彼を待つ間に、きれいだなぁと思ってみていたひまわりの咲く美しい公園の景色でさえ、目に入らなくなった。 何をまぁ開き直ってるんだこの男は!なんて思ったりもしたけど、案外すんなり受け入れられたものだ。言い返すことなくわかったとだけ返答した私がいた。というか、それ以外に何と返答したらいいかわからなかった。  もともと終わりが見えていたように思うし、それに今の自分ならすぐにでも新しい相手が見つかるだろうともなんとなく思った。  ただ一つ、許せなかったのは、自分がふられたという事実だった。 じゃあ今までありがとな、なぁんて淡々とした挨拶をしてこの男は私に背を向けて颯爽と去って行ったけど、その少しあとで自分の中で突然ふつふつと湧き上がる何かを私は感じた。これは怒りだ。 別れを告げられた。頭では冷静に理解しているつもりでも、胸の奥に隠れる苛立ちを鎮めることはできなかった。 「ほんと、俺、あんたのこと知らないんですけど・・・」  まだ言うか!そう思ったけど、中学生の基は、今と変わらない強く輝く黒い瞳を私に向けた。 私はこの人に仕返しをすることを決意したのだ。そう、三年の時を超えて。
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