第一章 あの日のきみともう一度

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 困惑とパニックでいっぱいになりながらも校門へ向かうこと数回。すべては失敗に終わった何度目かの挑戦の末、楽しそうに友人たちと談笑しながら歩いてくる許せないことの発端である張本人を発見してしまったのだ。 いや、今よりかなり子供じみていて、今ではあまり見かけなくなった馬鹿笑いをして、手に持つサッカーボールをばしばし叩いていた。信じられなかったが、私がこの人の姿を間違えるはずない。すぐに中学生の基だとわかった。 なぜだかわからないけど、この時、私はここでこの人に仕返すために、神様から与えられたチャンスなんじゃないかと思った。 そして、現在に至る。 「どこの神様がそんなことすんだよ」  ここから一歩も通さないと言わんばかりに立ちはだかる私に、とうとう降参したのか、基は絶望的な面持ちのままその場に座り込み、ため息をついた。今から部活に向かうところだったのだろう。一緒にいた仲間には退散してもらった。 「死神かよ!」 「別に命とろうってわけじゃないけどね」 「・・・」  予想以上に子供っぽいことをいう基に、思わず怒りを忘れて口元が緩みかけた。いつも冷静沈着ですまし顔の今のあいつとはまるで別人のようだ。  自分の発言に気付いてか、本人も恥ずかしそうに顔をそむける。ダメだ、耐えられない。 「・・・うーん、まぁ、神様といえば、北瀬川(きたせがわ)神社の神様かな?」  そういえば、怒りに身を任せて向かった先は北瀬川神社だった。よく覚えてないけど、私はそこでお守りを買って・・・ 「そうよ。私、北瀬川神社に行ってから、気付いたらここにいたんだ」  そうだ。そうなのだ。 「はぁ?正気かよ。その神社、俺に復讐させるためにあんたに力を貸したってこと?」 神も仏もあったもんじゃないなと笑えるくらい蒼白な顔になっている基。 「ってかそもそもなんでこんな女と付き合ったんだよ、未来の俺・・・俺、ケバい女って一番嫌いなんだけど・・・」 「け、けばっ・・・」  もはや私も目に入っていないのだろう。失礼なことをばんばん言い始める。  けばい女が嫌い?鼻で笑いそうになる。 「何言ってんの。中学時代からキラキラした高校生のお姉さんたちと付き合ってたくせに」 「はぁ?付き合ってねぇえよぉおおおおお!」
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