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見慣れないほどに困惑する基は、通り過ぎる人たちが思わず振り返ってしまうくらいだ。
あの、赤石基が・・・とでも思われているのかもしれない。いや、間違いない。中学校時代(まぁ、今も変わらないけど)の基は、学校で知らない人がいないくらいだったから。
私が知らなかったとでも思っているのだろうか?片思い歴二年半を舐めないでほしい。
ずっと見ていた。遠くから、それはもう毎日見ていたくらいだ。近づけないのはわかっていても好きで好きで仕方がなかった。
でも、基は当時から人気者だったし、校門で待ち構える美人な高校生がいたことは当時の私もしっかり目撃していた。
じゃあどうして、そんな人気者と私が付き合えたのか・・・うん。永遠の疑問だと思う。
「絶望的な心境になられてるところ、大変申し訳ないけど事実なのよ。とっとと受け入れなさいよ。というか、いちいち失礼よね。これでもミス修(しゅう)徳(とく)高校に選ばれてるんですけど」
結構見た目には自信あるんですけど?と続けると、うそだぁぁぁぁとさらに荒れ狂う基に、なんだか怒りよりもだんだん可哀そうな気持ちがわいてきた。つくづく私も甘いなって思うけど、何も知らない中学生を捕まえて、知りもしない未来について話すことにだんだん罪悪感が出てきたことも確かだ。
「もう、いいわ」
「・・・は?」
「行けば?部活、始まるんでしょ?」
なんだか、どうでもよくなってきた。
「でもあんた、校門から出られないんだろ?」
いやだいやだと言いつつも、私の話を信じてくれたのだろうか?まぁ確かに、あれだけ何度も校門に向かったはずの私がすぐさま自分の前に戻ってくる現象を目の当たりにしていたら信じないって方がおかしいと思うけど。
強い光を放つ瞳が、私を映す。
ああ、変わってないなと思う。
「どうにかなるでしょ」
今まで見たこともないくらい動揺した基が見れた。仕返しをするとしても、きっとここまでだ。これ以上はどうすることもできない。
「まー、もし、あんたが部活終わる頃もまだこのままだったら、何かほかの仕返しを考えとくから」
「・・・あんた、名前は?」
「は?聞く必要あんの?」
あんた、このまま部活に行ってそのまま帰る気なんじゃないの?
「い、一応だよ・・・」
「・・・エマよ」
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