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なぜ、それがばれてしまったかというと、うちの下の子供がどうも世間一般で言うところの霊感の強い子供で、ある日夜中に突然部屋で泣き出しました。
なだめた妻が事情を聴いてみると、うちの子供の前にいわゆる霊が現われたようなのですが、その特徴を詳しく聞いてみると以前僕が経験した体験の中で現れた霊とそっくりだったのです。
彼女はそのことでピンと来たのか僕に何か霊が寄ってくるようなことをしていないか問い詰めてきました。
まさかそのようなことでばれるとは思っていなかったので、僕は観念して『黒川先輩』にまつわる話を書き進めていることを正直に白状しました。
僕の告白を聞いた彼女は最初そういうことをするのは今回の件もあり危ないんじゃないかと案じていましたが、話を書き進めるうちに次第に理解を示してくれるようになりました。
それから少し経ったある夜、僕は妻と乗用車で家に向かって田舎の山道を走っていました。
妻はスピード狂で僕ののんびりした運転が好きではなく、二人でドライブする際には彼女が運転することが多かったのですが、移動中不意に彼女が口を開きました。
「人はどうしてこんなに心霊話や怪異談に魅かれるのかしら?」
その質問はどうも僕の投稿している『黒川先輩』にまつわるエピソードが彼女の予想以上に反応が返ってくることを訝しく感じていることもあるようでした。
「世の中に怪談話を蒐集したり、心霊スポットに探訪する人達は絶えないでしょう?」
彼女は前を向いて運転したまま続けました。
「そんなに多いのかなあ」
僕の感覚では一部の過激なマニアがいるだけで、普通の人はそんなところに好奇の念をもって近づこうとはしないと思えました。
「……そう言えばね」
なぜかひそめた口調で彼女は話し始めました。
「この山の古い登り道の奥に今は使われてない旧トンネルがあるの、新トンネルができたからもう通る車はほとんどいなくなってね」
そこまで旧トンネルのことを説明すると彼女は話すのを止めました。
しばらく僕は彼女の話の再開を待っていましたが、我慢できなくなって続きを促しました。
「そ、それで、そのトンネルには何があるの?」
「ほら!」
彼女は大きく息を吐き出しながら声を漏らしました。
「あんた今私が旧トンネルの話をしただけで心霊や怪異的な逸話が出てくるものと期待したでしょう」
「えっ、いや、それは……」
僕の考えなしの言動に彼女は呆れてしまったのか、微妙に声が高まりました。
「それって、もはや心の病のレベルなんじゃないの?」
そこまで話してふっとこちらに一瞬顔を向けました。
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